救急医療について
市民の皆さまに大きな安心を
──千葉市立海浜病院の救急科誕生の背景について教えてください。
これまで美浜区・花見川区・稲毛区には救急患者を積極的に受け入れる2次救急医療機関がありませんでした。小児科については当院で24時間、患者さまを受け入れてはいましたが、それ以外の科についてはこのエリアで急患が発生しても救急車の受け入れはスムーズに行われず、地域の皆さまにはたいへんなご心配不便をおかけしていました。
しかし、2019年に救急科専門医である私が着任して千葉市立海浜病院の救急科がスタート。救急車の受け入れを通じて、救急外来(ER)での初期診療を行えるようになりました。
エリアはもとより、千葉市全域の皆さまに大きな安心をお届けできるようになったことを、心から喜ばしく思っています。
あらゆる症例の受け入れ
──特徴について教えてください。
現在、千葉市立海浜病院の救急科では、内科系、外科系を問わず、あらゆる救急疾患の初期診療を行っています。2019年の救急車の受け入れ実績は成人で約1500台となりました。
患者さまにはご高齢の方が多く、症例としては脱水症状、熱中症、感染症、肺炎等で動けなくなったケースが目立ちます。心筋梗塞、狭心症などについては各診療科の専門医と協力して治療を行い、脳血管障害については当院に脳外科がないため、いったん受け入れて診断した後、専門医のいる他院への転院送を行っています。
このように救急科として独立した科があり、2次救急病院としてあらゆる症状の患者さまを受け入れ、診断し、安定化させる入院治療につなげるということを専従で行っています。これも他科との連携がしっかりとしており、バックアップ体制が整っているためです。
貫くのは、断らない医療
──救急科のポリシーについて教えてください。
私たちの基本的なスタンスは“断らない医療”です。
千葉市では6病院が収容困難事例を減らす事業について取り組んでおりますが、当院もその一員であり、市立病院としての使命のもとで“断らない医療”を貫いています。
私は「ERは公立病院が担うべき」が持論ですので、今後もこのスタンスを貫いていきたいと考えています。
質を下げずに効率を上げる
──医療の充実のためにどんな工夫をしていますか。
当院に限ったことではありませんが、救急専門医が日本にはまだ不足しています。そこで当院では人手が足りない分をシステムで補おうという発想で取り組んでおり、実際に素晴らしいシステムができあがりつつあると感じています。
具体的な改善策としては、検体の搬送は看護師でなくSPD(搬送スタッフ)が行う、救急車の受付をスピードアップして救急隊員の滞在時間を半減させる、スピーカーホンを導入して私が話していること患者さんの情報を救急外来のスタッフ全員が理解共有することで準備を前もって進められるようにする、といったことです。
こうした取り組みの意味を病院全体で共有することで、他の科のスタッフとの連携もスムーズになりました。当院のチームワークのよさの表れだと自負しています。
“医療の質を下げずに効率を上げる”ことに成功したこの“海浜モデル”は救急隊員の皆さまからも高く評価いただいています。
人材の育成にも取り組みたい
──今後の方針について聞かせてください。
このように1年間かけて改善を重ね、チームプレーに基づくシステムを構築してきましたが、一方で人材の育成というテーマも非常に重要です。
そこで私としては研修を通じて人材の育成に力を入れ、多くの救急専門医を育てていきたいと考えています。千葉市立海浜病院の救急科は、さらに進化を続けていきます。