耳鼻いんこう科
広範囲の疾患に対応
──耳鼻いんこう科の概要をご紹介ください。
千葉市立海浜病院は当市における地域中核病院の役割を果たしています。
耳鼻いんこう科においては、一般的な耳鼻科救急疾患の入院治療に加え、中耳外耳、鼻副鼻腔、咽喉頭、頸部(けいぶ)、甲状腺・副甲状腺、唾液腺など幅広い耳鼻いんこう科手術に対応しています。地域中核病院としての責務を果たすべく、狭い分野に特化せず、広範囲の耳鼻いんこう科疾患に対応していることが当科の強みです。
診療は常勤医師3名で行っており月に2回ほど外傷性や炎症性の緊急手術を行っています。
小児科・新生児科が充実
──特徴はどのような点でしょうか。
千葉市立海浜病院は小児科・新生児科が充実しています。そのため小児耳鼻いんこう科疾患の緊急症例や手術症例、小児・新生児の難聴症例が多く、日本耳鼻咽喉科学会から新生児聴覚スクリーニング後の二次聴力検査機関に指定されています。
また他院ではあまりみることのない新生児の喉頭気管の狭窄症例が多数あります。小児科・新生児科の先生方と協力して診療にあたっております。
県内唯一の内視鏡下の顎下腺唾石手術
──特に実績ある治療について教えてください。
耳鼻いんこう科の代表的疾患の1つである顎下腺唾石の低侵襲手術で全国的な実績があります。
唾液を産生する組織である顎下腺の管内にできる石を顎下腺唾石といいます。唾液の排出が妨げられるため、食事で顎の下が腫れたり痛くなったりします。
口内深くにある顎下腺唾石は、日本では頸部を切開する手術(顎下腺全摘術)が主流です。しかし顎下腺全摘術では、頸部に傷が残ることと顔面神経を傷つけるリスクがあります。当院で行っている低侵襲手術は海外ではless invasive surgeryとよばれ、頸部は切開せずに口内から手術を行います。
低侵襲手術には内視鏡手術と口内法の2種類があります。
内視鏡手術は顎下腺管に1.6mmの内視鏡を挿入して唾石をみつけて摘出する方法です。口内法は口内を切開して大事な神経や血管をさけて唾石だけを摘出する方法です。両方の手術を併用することもあり、唾石の位置や大きさで手術方法を決定します。
内視鏡手術は千葉県内では千葉市立海浜病院でしか行っておらず、市外からも多数のご紹介をいただいております。
この内視鏡下の顎下腺唾石手術導入以来の5年間で口内深くにある顎下腺唾石症の手術は合計112件ありますが、そのうち内視鏡手術が28件、内視鏡と口内法の併用手術が39件、口内法手術が34件、顎下腺全摘術が11件となっています。
他院への紹介もためらわない
──どんなことを大切にしていらっしゃいますか。
治療にあたっては、患者さんにとって何が最善であるかを常に考えています。当院で治療を行う疾患については、新しい情報がないか学会や論文をチェックしています。その結果、さきほどご紹介した顎下腺唾石の低侵襲手術を開始いたしました。
しかし近年の医療技術の進歩は著しく、全ての疾患で最善の治療を行うことは難しくなっています。特に耳鼻いんこう科の癌では内視鏡や専用機器が開発され、これまでの手術よりも確実に癌が摘出できるようになっただけでなく、患者さんの負担も非常に小さくなっています。しかし、これらの手術機器は非常に高価な上に使いこなすためには症例を集める必要があります。そのため全ての耳鼻いんこう科の手術を単一施設で行うことは難しく、それぞれの病院が得意な分野を磨いて症例を集める時代となっています。
このような時代の変化に対応して、千葉市立海浜病院ではたとえ遠方の病院であっても、患者さんにとって最善であると判断すればためらうことなく紹介いたします。そして当院で行う治療については全国学会で得た新たな知見の導入を目指しています。また症例報告など当院からも情報発信に努めています。
医師としての本質的なあり方にこだわる
──患者さんへのメッセージをお願いします。
耳鼻いんこう科の医師としてのやりがいとは、診断から治療・手術までトータルに行え、自らの手技で患者さんの症状改善に貢献できることです。 患者さんのために何が最善かを常に考えておりますが、最善は一朝一夕には実現できず日々の実績の積み重ねと努力が不可欠と考えています。
地域中核病院の耳鼻いんこう科としての最善の責務を果たすべく、日々精進して参ります。