周産期・小児医療について
患者さまと二人三脚で
──周産期医療・小児科医療について教えてください。
命が宿り、生まれ、そして人生が始まる。そんな大切なときを支えるのが周産期・小児医療です。マラソンでいえばヨーイ・スタートで走り出し、安定した走行になるまで、二人三脚で一緒に伴走します。
周産期医療では、順調に経過していた妊婦・胎児が急変するなど救急医療の要素があるため、24時間365日体制で、気の抜けない医療が求められます。最近は初産年齢の高齢化が問題になっているほか、基礎疾患や精神疾患への対応も求められています。また、低出生体重児の数は増加傾向でありましたが、現在は横ばいとなりました。産まれたばかりの低出生体重児は不安定で、今後も新生児科で十分な医療提供ができるようにしていきます。
一方の小児医療については、従来より時間外受診は多く、そのほとんどが軽症でありますが、緊急性のある子供たちを見逃さないように24時間365日、気が抜けません。最近では、アレルギー疾患や精神及び行動の障がいといった疾病が目立つようになり、対応が求められています。
多職種協働・多機関連携にも力を入れる
──周産期医療・小児科医療の現状を教えてください。
周産期医療も、小児科医療も医療資源の集約化が進み、市中病院で小児科、産科を標榜している病院が減少してきています。一方で産科、新生児科、小児科の中核病院には、複雑な病気の患者さんも増え、他の診療科の支援がますます必要になっています。
また、切れ目のない周産期医療と小児医療を提供するにあたり、予防、早期発見、早期治療、継続支援の流れの中で、各科単独で、あるいは病院だけが患者さんを支えるのではなく、多職種協働・多機関連携がとても大切になってきました。
少子超高齢化の進む時代で課題もまだまだありますが、日本における妊産婦死亡率、乳児死亡率の低さは世界有数のものです。この事実には胸を張りたいと思います。
24時間365日体制で支援
──どんな点が千葉市立海浜病院の特徴でしょうか。
千葉市立海浜病院の小児科は地域小児科センターとしての役割を担っており、24時間365日、年間約2300件の小児救急患者さまを受け入れています。
夜間応急診療においてはトリアージを担うスタッフが判断し、15分以内の診療が必要な緊急性のある場合は院内の担当医師が対応に当たります。怪我や熱傷、頭部外傷にも対応している点も特徴です。
また、専門外来も整備され、感染、神経、循環器、代謝、内分泌、腎臓、アレルギーについてはその領域の専門の医師が診療いたします。同様に小児外科疾患、小児整形外科疾患、小児耳鼻科疾患、小児形成外科疾患、小児心臓外科疾患と、幅広い領域の外科系疾患にも対応しています。
一方、新生児科も24時間365日、緊急の新生児を受け入れており、産院で出生した新生児についてはお迎え搬送も対応しています。NICU、GCUを備えており、低出生体重児に対応する拠点病院でもあります。
さらに産科についても24時間365日対応し、MFICUも備えています。地域小児医療の診療レベル向上を目指し、定期的に地域の医師と公開カンファレンスを行うなど、小児科の専門研修基幹施設として、次世代の小児医療を担う人材の育成にも意欲的です。
人生への継続的な介入
──先生のポリシーを教えてください。
私自身、小児ぜんそくだったことから、人の役に立ちたいとの思いでこの道に進みました。小児科の医師として大切にしていることは、常に子どもの立場に立って考えること、そして家族の人生にどのような影響があるかを考えることです。
患者さまご本人が成長し、ご家族の環境も変わっていく中、私たちも継続的な支援を通じて適切な関わりを続けていきたいと考えています。もちろん病院単独では限界がありますから、必要に応じて他の機関と適切に連携を進めていきたいと思います。
正しい知識で予防を
──患者さまへのメッセージをお願いします。
子どもを守るために大切なのは、周囲の大人が適切な知識を持って予防に努めることです。いざというときに慌てないよう、#8000(小児救急電話電話相談)や小児救急のホームページなど、支援ツールを活用いただければと思います。妊産婦・母親はどうしても孤立しがちです。助けが必要と感じたら、どうぞ遠慮せずに声を上げてください。