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移行期医療について

移行期医療について
移行期医療について

小児期から成人期への橋渡し

──移行期医療とはどのような医療でしょうか。

移行期医療は、多くの方にとってなじみの薄い言葉かもしれません。
慢性疾患を持っている小児の患者さまが、成人になっても引き続き診療が必要になる場合、小児期医療から成人期医療へスムーズな橋渡しを行う医療が、移行期医療です。

ぜんそくや糖尿病などの一般的な病気は比較的スムーズに小児の医療から成人の医療へと移行できます。ところが小児の先天性心疾患の患者さまが成人するケースについては専門に診る体制が整っておらず、小児科や心臓外科の医者が引き続きフォローするのが一般的でした。
こうした状況を改善し、先天性心疾患の患者さまを生涯にわたって継続的に診療する医者、施設を整えようとの狙いで誕生したのが、移行期医療の領域です。

ともにライフイベントを乗り越える

──千葉市立海浜病院の移行期医療にはどのような特徴がありますか。

千葉市立海浜病院では、成人先天性心疾患を中心に移行期医療を提供しています。かつて先天性心疾患の子どもは成人することが難しかったのですが、近年は医療の進歩によって心臓手術成績も安定し、多くの子どもが成人できるようになりました。そうした患者さまが就職、結婚、出産という人生の節目を迎えつつ、成人期の病気も乗り越え、終末期まで平穏に暮らせるように支援することを、私たちは使命としています。

特に成人先天性心疾患の患者さまの出産については、周産期・新生児科・小児科をもつ病院として各科との連携のもと、安心して出産に臨んでいただけるよう、サポートしています。

母親が重症心不全の場合、未熟児が産まれる可能性もあるので、NICUでの対応が可能です。さらには心臓に障がいがあるということで精神的な問題を抱える患者さまも少なくないことから、当院では心理療法士によるカウンセリング体制も整えています。

地域の医療トレーニングにも注力

移行期医療について

──地域の中ではどのような役割を果たしていますか。

千葉県には、成人先天性心疾患専門医の修練施設が2つありますが、その1つが千葉市立海浜病院です。その立場から、当院では地域の医療トレーニングや人材育成にも力を入れ、講演活動などを展開しています。

当院にはあらゆる診療科がそろっているわけではないため、患者さまの状況によっては転院など他院の協力を仰ぐことになります。しかし、日本で安定した心臓の手術が普及してからまだ20数年しかたっておらず、小児から大人へと成長した成人先天性心疾患の患者さまそのものが少ないため、受け入れを躊躇する医療機関も少なからず存在します。
こうした状況を改善し、当院との連携をよりスムーズなものにする上でも、医療トレーニングや啓蒙活動は重要なことであると考えています。

患者さまの人生に寄り添いたい

──先生のポリシーについて教えてください。

私は小児科医としてスタートし、小児の心疾患、特に不整脈を専門として学んできました。その経験の中で成人の患者さまも診察するようになり、次第に患者さまやそのご家族と全人的なお付き合いをさせていただくようになりました。
心疾患の治療は長期にわたりますから、自然と就職のこと、結婚のこと、出産のこと、家族のことと、さまざまな問題にも向き合うようになったわけです。その意味ではホームドクターのような役割を担うこともあります。

このように人と人とのつながりが非常に濃いのがこの領域ならではの特徴で、まさしく患者さまの人生に寄り添う喜びを味わっています。病気と対峙するというより、人間として向き合うというのが実感です。

“そういえば”という不安があるなら

移行期医療について

──患者さまへのメッセージをお願いします。

私は日本成人先天性心疾患学会の立ち上げにも関わりましたが、日本においては移行期医療の取り組みは始まったばかりで、心理面でのサポートも含め、より安全で確かな医療体制の構築に向けて努力を続けているところです。不安なことがあればぜひご相談ください。

幼い頃に心臓の手術を受けたと親から聞かされ、もう治ったものと思われている方が、40歳を過ぎて不整脈が出るようになったと相談されるケースがあります。中には、手術を受けたこと自体を知らされておらず、心臓の不調をきっかけに初めてそのことを知ったという方もいらっしゃいます。

不整脈などをきっかけに「そういえば親から手術の話を聞いたことがある」と思い出し、不安が大きくなってきたら、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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