産科・ 婦人科 飯塚医師インタビュー
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セーフティネットとして
── 産科の特徴について教えてください。
お産は基本的にハッピーなものではあるのですが、反面、様々なリスクが伴うものでもあります。
千葉市立海浜病院の産科は地域周産期母子医療センターとして、早産児や低出生体重児の出産などが予測されるハイリスク妊娠を、NICU(新生児集中治療室)との連携のもとで取り扱っています。年間分娩数約600のうち帝王切開の割合が6割を占めることでも、ハイリスク妊娠の多さがおわかりいただけるでしょう。妊産婦や胎児の状態悪化が予想される場合の母体搬送も多く受け入れています。また、多胎分娩も多く、千葉市内で産まれた双子のほとんどが千葉市立海浜病院での取り扱いとなっています。
近年では、医療的なハイリスク妊娠に加え、社会的なハイリスク妊娠が増加傾向にあることは大きな懸念材料です。出産後の養育について出産前に支援が必要と認められる特定妊婦の増加です。特に目立つのは、貧困や精神的な問題を持つ方々の妊娠であり、さらには、かかりつけ医を持たない妊婦の飛び込み出産も社会問題となっています。こうした深刻なケースについても地域周産期母子医療センターとしての使命のもと、積極的に受け入れています。
まさに母子の命を守るセーフティネットでありたいと、私たちは考えています。
事前に知りたいという希望に応える
── 遺伝カウンセリングも行っていますね。
ええ、千葉市立海浜病院では臨床専門医による遺伝カウンセリングも行っています。医学の進歩によって先天性疾患などがある程度出産前にわかるようになったことで、“知れるものは事前に知っておきたい”と考える方が増えたようです。それは人間としてごく自然な感情ですから、千葉市立海浜病院でもご希望に添うよう、務めています。
また、無痛分娩については心臓疾患の患者様に限定していますが、現在準備が進められている新病院においては正常分娩が予測される方の無痛分娩もお受けする方針です。
常に誠実でありたい
── どのような信念をお持ちですか。
小学校の卒業文集に「将来は医者になりたい」と書いたように、人の命を支える職業に対する憧れが医者である私の出発点でした。産科の道に進んだのは、明るく、喜びに満ちたお産の現場に惹かれたことが理由です。もちろん現実にはそうしたお産ばかりでなく、時には命の危険に直面しかねない厳しいお産があることも、今ではよく理解しています。日本のお産は世界で最も安全とされるものの、それでも一定のリスクは避けられません。だからこそ私は常に誠実に患者様と向き合い、支えることに尽くしています。
遺伝カウンセリングに際しても、最終的な判断を下すのはあくまで妊婦さんご自身です。私はその判断をお支えすることに誠実でありたいと考えており、そのためにも妊婦さんとの信頼関係を築くことを何よりも大切にしています。
お産について正しい知識を
── 市民の皆さんにメッセージをお願いします。
市立海浜病院では、正常分娩が予測されるローリスクの妊婦さんも喜んで受け入れています。近年では高齢出産が珍しいことでなくなり、芸能人の高齢出産が明るいトーンで報道されることも増えました。ただ、そこに至るまでに様々なリスクを乗り越えてきたことは、報道されないようです。お産はハッピーなことですが、一方で深刻なリスクも伴うことを、ぜひ市民の皆さんには知っていただきたいと思います。正しい知識を持っていただき、その上で何か気がかりなことがありましたら、ぜひ市立海浜病院にご相談いただければと思います。決して敷居は高くありません。