循環器内科 丹羽医師インタビュー
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心臓や血管を見守る
── 循環器内科についてご紹介ください。
千葉市立海浜病院の循環器内科では、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、心不全、不整脈、動脈硬化症など、心臓や血管の病気についての検査や治療を行っております。
虚血性心疾患は運動負荷検査や冠動脈CTなどで診断し、緊急性のある場合は速やかに冠動脈インターベンション(ステントなど)治療を行います。また、徐脈性の不整脈(洞不全症候群や完全房室ブロック)につきましてはペースメーカー治療を行っております。頻脈性の不整脈(心房細動や発作性上室性頻拍など)でカテーテルアブレーション治療が必要な場合は千葉大学病院の不整脈専門医に外来で診察を受けることができます。
先天性心疾患の移行治療に取り組む
── 特に力を入れていること何ですか。
近年、小児医療の進歩によって、先天性心疾患の患者様が、手術の有無に関わらず、思春期や成人期を迎えるケースが増えています。大変に喜ばしいことではあるのですが、それに伴って必要となるのが小児から成人への移行治療です。先天性心疾患の患者様が成人することで心不全や不整脈などの症状への対処が必要となりますし、結婚や妊娠出産という問題にも直面します。他の疾患との合併依存症の可能性もあるほか、精神面でのサポートも必要となってくるでしょう。しかし日本で最初に先天性心疾患の手術が行われたのが1955年頃で、より複雑な症状の手術治療が行われるようになったのが1980年代とこの領域の歴史は浅く、移行治療は日本全体でもまだ確立しているとは言えません。
千葉市立海浜病院では先天性心疾患に経験豊富な医師が在籍しているほか、心臓血管外科、産科、消化器内科などとの連携により、移行治療に積極的に取り組んでいます。小児期から成人期へ、さらには生涯にわたって患者さんを支援したいと考えていますので、ぜひご相談ください。
初診は1時間、再診でも30分
── 先生が大切にされていることを教えてください。
私は幼い頃から読書が好きで、医師を志したのも1冊の本がきっかけです。それはアルベルト・シュバイツァー博士の偉人伝でした。中学生だった私はシュバイツァー博士の医療分野の貢献に感銘を受け、困っている人を助ける医師という職業に興味を抱くようになったのです。
私が大切にしているのは、患者さんの立場に立ち、その言葉によく耳を傾けることです。患者さんが家族に向かって話すようになっていただきたいと考え、初診では最低1時間、再診であれば30分はお話を聞くようにしています。特に成人になられた先天性心疾患の患者さんの場合、生まれてから現在までの生活について振り返ることが必要ですから、どうしても時間は長くなってしまいます。医師には話しづらいという患者さんの場合は、ナースに話を聞いてもらうことも行っています。
今後、先天性心疾患の患者さんが高齢期を迎えるケースが増えてくるでしょう。多職種連携診療体制で寄り添っていくためにも、高齢となった患者さまを支える体制づくりに取り組んでいきたいと考えています。
ドロップアウトをゼロに
── メッセージをお願いします。
私が特に憂慮しているのは、ドロップアウトの問題です。先天性心疾患の患者さんの移行治療がスムーズに行われず、成人期を迎えていつの間にか治療から離れてしまう患者さんは想定以上に多く、その割合は50%以上とされているほどです。 「手術が済んだからもう病院に行かなくていい」と思う方もいれば、「大人になったら何科に行けばいいかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。幼少期の手術だったため、治療を受けたこと自体覚えていない方もいらっしゃるかもしれません。
そのまま放置することなく先天性心疾患の方は、生涯にわたっての経過観察が必要な方が少なくありません。この先の長い人生のためにも、ぜひ当科にご相談ください。ご家族やご親戚の方も、思い当たる場合はご本人にお伝えいただき、市立海浜病院にご相談されるよう、背中を押していただければと思います。