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妊娠高血圧症候群について

妊娠高血圧症候群について

海浜病院は「妊娠高血圧症候群」の診断・治療に対応しています。妊娠高血圧症候群について、できる限り簡単に、わかりやすく説明します。

妊娠高血圧症候群とは何ですか？

妊娠高血圧症候群とは、文字通り妊娠時に高血圧を認めることです。
以前は妊娠中に高血圧、たんぱく尿、浮腫（むくみ）のいずれかがあれば「妊娠中毒症」と呼ばれていましたが、最近は特に高血圧が重要視されるようになり、段階的に定義変更されて2018年からは「妊娠高血圧症候群（hypertensive disorders of pregnancy：HDP）」と名称が変更になりました。

どのような場合に妊娠高血圧症候群と診断されますか？

妊娠高血圧症候群の定義と診断基準
妊娠時に収縮期血圧140mmHg以上、または、拡張期血圧が90mmHg以上となる場合に診断されます。

妊娠高血圧症候群の病型分類

症候による亜分類

発症時期による病型分類

妊娠高血圧症候群の
症状について

妊娠高血圧症候群の症状はどのようなものですか？

頭痛やめまい、視界異常（ぼやける・チカチカする）、耳鳴り、ほてりなどを感じたりすることもありますが、自覚症状が乏しく病院で診断を受けて初めて妊娠高血圧症候群だと気づくような場合もあります。

自覚症状は乏しくても重症化した場合は、HELLP症候群（赤血球の破壊や肝機能障害・血小板の減少）やまれに「子癇」と呼ばれる痙攣発作が起こることがあります。この場合は母子ともに危険な状態になるので、早急な対応が必要になります。

その他、妊婦さんには高血圧に伴う脳出血や神経障害、肝臓や腎臓、胎盤などの臓器の機能障害が起こりやすくなるほか、胎児に対しては栄養や酸素が不足してしまうことで十分に育つことができず発育不良（胎児発育不全）で低出生体重児が生まれたり、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなり（常位胎盤早期剥離）、心拍異常状態（胎児機能不全）になって最悪の場合は胎児が死亡してしまうなどのリスクが高まります。

妊娠高血圧症候群の
原因について

妊娠高血圧症候群になる原因は何ですか？

妊娠高血圧症候群が起こる正確な原因はまだ解明されていませんが、最近の研究では「胎盤の形成不良」が関係しているのではないかと考えられています。

詳しくは、妊娠初期にお母さんから赤ちゃんに酸素や栄養をやりとりする血管（らせん動脈）がうまく形成されなかった場合、妊婦に高血圧や蛋白尿、胎児発育不全など妊娠高血圧症候群の症状を引き起こすのではないかと言われています。

妊娠高血圧症候群になりやすい人はどんな人ですか？

次のような場合は、妊娠高血圧症候群を起こしやすいと考えられています。

• 若年妊娠（20歳未満）、高齢妊娠（40歳以上）
• 妊娠前から肥満である・あるいは妊娠後に体重が過度に増えている
  (BMI=25以上の肥満　特にBMI30より多い場合は高リスク)
• 妊娠前から高血圧、腎疾患、糖尿病などの病気がある
• 家系に高血圧、糖尿病のある人がいる
• 初めてのお産（初産）である
• 双子などの多胎妊娠である
• 2人目以降の妊娠で、前の妊娠時に妊娠高血圧症候群であった　など

これらの項目に当てはまる妊婦さんは妊娠高血圧症候群になるリスクが比較的高いため、注意が必要です。

妊娠高血圧症候群の
治療法について

妊娠高血圧症候群はどのように治療しますか？

妊娠高血圧症候群の治療
重症でない妊娠高血圧症候群は基本的には通院にて治療を行います。
毎日ご家庭にて血圧・体重の測定を行い、通常より間隔を細かく産科を受診していただきます。

• 「安静にする」
  安静にすることで、交感神経の緊張が緩和され、子宮・腎血流量は増加し血圧は低下します。なお、治療中の適度な運動（30分程度のウォーキング程度）は 問題ありません。
• 「食事療法」
  体重が増えすぎると血圧が上がるため、適切な食事による体重管理を行います。なお、水分摂取制限や利尿剤は血栓症のリスクを高め、また過度の塩分制限の効果は近年否定的のため、必ず医師や栄養士の指導のもと管理を受けて下さい。
• 「薬物療法」
  軽症でも安静、食事療法などで改善がみられない場合は、妊娠中でも使用可能な降圧薬で血圧をコントロールします。

高血圧症状やむくみ、体重増加など症状が強い場合や、胎児の発育が悪い場合などは入院管理となることがあります。

重症妊娠高血圧症候群の治療
入院管理とし、血圧を下げるための降圧剤や、子癪発作予防のための鎮痙薬（硫酸マグネシウム）を適宜使用して母体の状態をコントロールします。

重症妊娠高血圧症候群の治療としては出産が一番の治療であり、通常出産後は母体の症状は速やかに改善します。そのため、妊婦さんの状態と胎児の状態を慎重に判断し、分娩により妊娠を終わらせること（妊娠帰結）を検討します。
早産期であっても胎児の未熟性を考慮し、新生児科との十分な検討の上で、分娩時期を判断します。

なお、お産は帝王切開になることが多いですが、満期（妊娠37週以降）の場合は経腟分娩をめざします（この場合は母体の痛みによるストレスを減らすために無痛分娩を行うことも可能です）。

通常、出産後は妊娠高血圧症候群の症状は速やかに改善します。
ただし重症化していた場合は出産後も高血圧や蛋白尿が持続することがありますので、　退院後も通院していただいて経過観察を続けます。

妊娠高血圧症候群の治療費用はどのくらいかかりますか？

妊娠高血圧症候群の治療費用は入院の有無や治療内容によって幅が大きく、一律いくら、という計算はできません。
ただし、都道府県や市町村など自治体によっては妊娠高血圧症候群等の医療費助成を行っている場合があります。助成の有無や金額等の内容については、お住まいの自治体にお問い合わせください。

海浜病院の
妊娠高血圧症候群治療について

海浜病院の診療体制

妊娠高血圧症候群は母体と胎児の両方にリスクがあるため、海浜病院では産科・婦人科のほか、新生児科、内科、麻酔科と連携して管理・治療を行っています。

通常の妊婦健診において血圧測定と尿検査を行い、妊娠高血圧症候群の早期診断を行っています。外来管理中に血圧が高い場合には自宅血圧の測定を行います。重症型の場合や合併症を発症した場合には入院していただき、治療を行います。

海浜病院の診療実績は年間何件くらいありますか？

計 54名（2024年）

• 海浜病院で妊娠高血圧症候群と診断し治療を開始した症例：
  23名
• 他院から治療に不応であったために転院された症例：
  31名

どのようにして受診できますか？

当院での受診を希望の方は他院からの診療情報提供書（紹介状）をお手元にご用意の上、予約センターで予約をお取りになってからご来院ください。

当院では、予約のない患者さんの電話による新規再来予約は、外来診療の混乱を避けるため、特別な事情がある場合を除きしておりません。何卒、ご理解・ご了承くださいますようお願い申し上げます。

予約に関する必要書類その他のご案内は下記のページをご確認ください。

関連診療科

• 産科・婦人科
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