手首の骨折(橈骨遠位端骨折)
手首の骨折
(橈骨遠位端骨折)
手首(てくび)の骨折で最も多い「橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折」について、できる限り簡単に、わかりやすく説明します。
病名(名称)について
“橈骨(とうこつ)”は折れている骨の名前で、“遠位端(えんいたん)”は折れている部位を示しています。
どんなときに起きますか? よくありますか?
中年以降(特に70〜80代)の女性が手を突いて、受傷することが多いです。若い人でも強いエネルギーが加わると骨折します。
骨折頻度は部位別でTOP3に入る、骨折しやすい部位です。
どんな症状が出ますか?
手首に強い痛み、腫れ、動きの制限などが出ます。中等症以上では見た目に変形が分かることがあります。
重症の場合には、神経症状が出現し、指にしびれなどが生じることがあります。
どんな検査をしますか?
基本的にはレントゲンとCT検査で十分ですが、軽症の骨折を見つけるには、MRIが必要なこともあります。
治療は必要ですか?
骨のずれが残ったままだと、手首の痛み、腫れ、動きの制限が残る可能性が高いです。手指にも痛みや動きの制限が出ることがあります。
専門の医師の診断を受け、早期にしっかり治療されることをおすすめいたします。
どんな治療をしますか?
① ギプス治療
骨折の程度が軽症であれば、ギプスで治療することも可能です。部分麻酔をした上で、画像検査装置の下で骨の形を整え、ギプスで固定します。
基本の固定範囲は肘の下から手までで、固定期間は4〜6週程度です。
固定にかかる所要時間は20分程度で、手指を動かすことは可能ですが、ギプスを外すまでは濡らせません(入浴時はタオル・ビニール袋などでカバーします)。
② 手術治療
骨折の程度が中程度以上、独り暮らしで早期に動かす必要がある場合などは、手術を行い、骨の形を整えて骨折部を金属の板(プレート)とねじ(ボルト)で固定します。
基本的には骨がついた後(術後6〜12カ月)に再度手術を行い、抜去することを勧めております。
- 手術時間は90〜120分程度です
- 出血量は通常50cc程度です。(参考:成人の献血は1回400ccです)
- 抜糸までの1〜2週程度は濡らすことができませんが、その後は入浴等が可能になります。 飲酒もこの頃から許可します。
手術当日の流れはこちらをご覧ください。
この手術は年間何件くらいありますか?
当院では千葉市内のクリニック・病院以外にも近隣の市からも御紹介いただいており、2019年4月〜2020年3月のこの手術の件数は132件でした。
手首の骨折手術はどれくらい費用がかかりますか?
手首の骨折の手術費用の目安は以下の通りです。
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3割負担 | 1割負担 | |
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腕1本の麻酔、日帰り手術の場合 | 9~10万円 | 3〜4万円 |
腕1本の麻酔、1泊入院手術の場合 | 11~12万円 | 4万円 |
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術後のリハビリや後遺症など、手術後のことについてはこちらを御参照ください。
外来手術について
(腕1本の麻酔の場合)
手術当日の流れ
- 手術の予定時刻の30分程前に外来に来ていただきます。
- 外来看護師さんと一緒に手術室に行きます。
- 手術室のロッカーにて、基本的には術衣に着替えていただきます。
- ベットに寝た上で、脈や血圧などを測定する機械を装着したら、手術する側とは逆の腕に点滴を取ります(化膿予防の薬を流したりするためです)。
- 麻酔の注射を開始します。基本的には肩の前方から行います。
- 超音波を見ながら、神経の近くに麻酔薬を注入します。
- 徐々に肩より先が痺れてきて、30分程度で鎮痛効果が完成します。麻酔の効きが悪い場合には、手術が始まる直前に別の麻酔を追加します。
- 出血予防のバンドを手術する側の腕の付け根に巻きます。
- 消毒を行います。
手術の最終セッティングをします。
細菌が入らないように清潔に手術するためにも、写真のようについ立てに紙の布のようなもので被せますので、手術している様子を見ることはできません。
- 出血予防のバンドを締めて、手術開始です。
手術中は部屋全体に好きな音楽をかけることも可能です。イヤホンやヘッドホンで聴くことも可能です。もちろん寝ていても構いません。 - 手術時間は内容によりますが、多くは90〜120分程度です。
- 手術が終われば、手を綺麗に拭いて、帰る準備を始めます。麻酔の影響で手が上がりませんので、三角巾で腕を吊ります。
三角巾は術後の腫れ防止のため、術後2~3日間は装着します。 - 外来にて注意事項を聞いて、処方箋を受け取って帰宅します。
手術後の治療について
手術後、外来はどれくらい来ますか?
大きな問題がなければ、最初の週が1〜2回程度、その次は1〜2週後、その後はさらに2〜4週後というように少しずつ間隔が伸びていきます。
6〜12か月後、レントゲンで骨がついたのを確認後、基本的には金属の板(プレート)を抜く手術を行います。
金属の板を抜いた後、1〜2回外来に来ていただいて通院終了(完治)となります。
トータルの通院期間は1〜1.5年程度の方が多いです。
金属の板(プレート)は抜いた方がいいですか?
図のように、プレートのエッジ(端)と指を曲げるすじ(腱)は近接しています。
長い間、腱とプレートが擦れると、ある日突然、腱が断裂し、指(主に親指)が曲がらなくなることがあります。5年以上経過後に、腱断裂したケースの報告もあります。
これらのデメリットを考慮すると、基本的にはプレートを抜去することをお勧めしております。
抜去の手術では入院は必要ありません。
腱断裂のリスクを許容して、プレートを抜かないという選択肢もありますが、詳しくは主治医と御相談ください。
リハビリ通院は必要ですか?
日常生活がリハビリになりますので、必ずしも必要ありません。
(自分で行う、簡単なリハビリは外来で指導いたします。)
早期回復、よりよく治すために、リハビリ通院を希望される場合には、基本的には紹介状を作成しますので、患者さん自宅近くのクリニック・病院で行っていただいております。
指や手首の動きの回復が遅いと判断した場合には、主治医よりリハビリ通院をお勧めすることがあります。
自宅で行う、自主トレーニングについて、以下PDFをご覧ください。
後遺症は残りますか?
骨折の程度によりますが、軽傷~中等症の多くの方は受傷2〜3か月後で、少し手首の硬さが残ることもありますが、日常生活レベルでは概ね支障なくなります。
いつ仕事やスポーツに復帰できますか?
ギプス治療、手術治療ともに手指は使えますので、事務仕事であれば、痛みの具合次第で治療開始数日で復帰可能です。
力仕事、スポーツについては、骨がついてからになります。
その前に行ってしまうと骨がずれたり、金属がずれたりすることがあります。経過が良好な方でも2か月半~3か月半程度かかります。