ばね指(弾発指・屈筋腱腱鞘炎)
ばね指
(弾発指・屈筋腱腱鞘炎)
病名(名称)について
ばね現象(弾発現象)
指を曲げてから伸ばすときに、ひっかかってから、急に“カクッ” “ガクッ”という感じとともに伸びる現象をいいます。この現象がある指を“ばね指” “弾発指”といいます。親指の場合には、曲げるときに“ガクッ”ということが多いです。
屈筋腱腱鞘炎
上記“ばね現象”は症状や状態を示しています。屈筋腱腱鞘炎は病気の成り立ちを示しています(下記を御参照ください)。
どんな病気ですか?
指を曲げるために、下のイラストのように指を曲げる腱(屈筋腱)が各指にあります(イラストでは親指と中指だけです)。 この腱が腕の筋肉に引っ張られたり、緩んだりすることで指が動きます。
腱鞘(腱を骨に沿わせるための鞘(トンネル))が腫れたり、腱自体が腫れると、腱鞘に腱がひっかかってしまうため、スムースな指の動きが出来なくなったり、痛みが出ます。腱鞘が腫れ、炎症が起きている状態を“腱鞘炎”と言います。
そのため、ばね指のことを“腱鞘炎”や“屈筋腱腱鞘炎”と呼ぶこともあります。
なぜ腱鞘や腱が腫れるのか? については詳細は解明されていませんが、どういう人に多いかはある程度分かっています(下記を御参照ください)。
どういう人に多いですか?
以下の方に生じやすいと言われています。
- 妊娠時・産後の女性
- 更年期以降の女性
- 手仕事・手作業の多い方
- 糖尿病の方
- 透析中の方
どんな検査をしますか?
典型的な症状の場合には、レントゲンなどの検査はしないことが多いです。骨や関節の状態が悪く、指の動きに支障が出ている可能性があれば、レントゲンやCTを行います。
治療は必要ですか?
ばね指は手を使う量を減らすことで自然に良くなることもあります。
中等症以上の方で、指が曲がったままや伸びないままを長期間放置すると、関節自体が硬くなることがあります。硬くなってしまうと、治すには手術や長期のリハビリが必要になることがあります。
どんな治療をしますか?
安静
手を使う量を調整出来る方は安静のみで様子を診ていただくこともあります。
ストレッチ
痛みが少ない方はストレッチでゆっくり改善することがあります。
注射
多くの場合は症状を早期に改善するために注射を行います。
- 腱鞘の炎症を抑える目的で、ステロイド+局所麻酔 の注射を行います。注射を打つ場所は痛い指の付け根です。
- 注射は歯医者さんの麻酔注射くらいの痛みがあります(稀に当日から翌日くらいまで痛みが強くなることがあります)。
- 1回の注射で70〜80%の方が、1週間後くらいから症状が半減いたします。全く効かない場合には他の病気を考える必要があります。
- 注射の効果は1年以内に切れる方が50%程度と言われています。再発した場合には再度注の注射か手術を行います。
手術
手術を行う主な患者さんは以下の方々です。
- 初期から症状が強い場合(関節が硬い、指が全く伸びない・曲がらない)
- 注射が3〜5回以上になった方
- 手術希望があった方
外来手術について
どんな手術ですか?
腱鞘(腱が通るトンネル)が腫れて、腱の動きが悪くなる病気ですので、局所麻酔(局部麻酔)後に皮膚を1.5cm程度切り、皮下脂肪を避けた上で、腱鞘の上側(トンネルの屋根)を切ります。
これによりトンネルの容積が広がり、指の動きが改善します。麻酔がかかっていても指は動かせますので、手術中に指の動きがよくなったことを確認します。
症状が痛みメインで、指の動きに問題がない場合には、必要な分の腱鞘を切開して、手術を終えます。
当院では皮膚を切らずに、麻酔のうえ針で腱鞘の上側を切る“経皮腱鞘切開術”を行っております。傷は針穴2〜3個程度と非常に小さくなります。
皮膚を切った方が安全かつ効果が高いと判断した場合には、そちらをお勧めしております。
どれくらい時間がかかりますか?
指1本 30〜60分程度で、日帰り手術です。
いつから指は使えますか?
翌日から指は使えます。
過度に使うと腫れが強くなりますので、注意が必要です。また術後1週間程度で行う抜糸までは水に濡らせません。
術後3〜4日で傷の保護が大きめの絆創膏になれば、ゴム手袋をして家事ができます。力仕事やスポーツについては、痛みが強くなければ、術後1.5〜2週間程度から可能です。
ばね指の手術はどれくらい費用がかかりますか?
ばね指の手術費用の目安は以下の通りです。
3割負担 | 1割負担 | |
---|---|---|
局所麻酔・日帰り手術・指1本の場合 | 7,000〜10,000円 | 3,000〜5,000円 |
局所麻酔・日帰り手術・指2本の場合 | 13,000〜15,000円 | 5,000〜6,000円 |
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全身麻酔で行うことはありますか?
局所麻酔(切開部周囲の麻酔)で行える、短時間の手術ですので、ほぼ全例 局所麻酔です。やむを得ない理由がある場合には、相談可能です。
この手術は青葉病院では年間何件くらいありますか?
最近は注射薬が良くなったため、手術自体が少なくなっています。
当院では千葉市内のクリニック・病院以外にも近隣の市からも御紹介いただいており、2019年4月〜2020年3月のこの手術の件数は95件(うち経皮腱鞘切開26件)でした。