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人工股関節について - 人工股関節置換術

人工股関節置換術

主に股関節痛で悩む人に行う人工股関節手術「人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」について、できる限り簡単にわかりやすく説明します。

人工股関節置換術はどんな人に行う手術ですか?

人工股関節置換術は、下記のような疾患の患者さんに手術します。

変形性股関節症
(へんけいせいこかんせつしょう)

変形性股関節症のレントゲン写真
変形性股関節症のレントゲン写真

股関節を構成する骨(骨盤骨、大腿骨)が加齢や臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)などを原因に変性し、関節軟骨の減少や骨の変形を起こす病気です。

大腿骨頭壊死症
(だいたいこっとうえししょう)

大腿骨頭壊死症のレントゲン写真
大腿骨頭壊死症のレントゲン写真

大腿骨頭(大腿骨の一番上の部分)の一部が、血流の低下により壊死(血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態です。骨壊死があるだけでは痛みはありませんが、骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現します。

他疾患でのステロイド投与やアルコール多量摂取が関係あるとされていますが、原因が明らかになっておらず、指定難病になっています


大腿骨頸部骨折
(だいたいこつけいぶこっせつ)

大腿骨頸部骨折のレントゲン写真
大腿骨頸部骨折のレントゲン写真

事故や転倒などにより、大腿骨頸部(大腿骨骨頭の下のくびれた部分)が折れる骨折です。骨折のズレが大きい場合は骨接合術(骨をインプラントでつないで骨癒合を待つこと)は難しく、人工関節置換術を行います。

高齢者の多くは大腿骨側のみを置換する人工骨頭置換術を行いますが、活動性が高く比較的若い方には人工股関節置換術を行います。

人工股関節置換術とはどんな手術ですか?

前述した疾患により股関節の骨や軟骨が壊れてしまった状態を人工物に置き換える手術です。Total Hip Arthroplasty(THA)または、Total Hip Replacement (THR)と表記されることもあります。

具体的には、股関節の骨盤側の骨(軟骨)は半球状に削り取った後に同様の半球状のインプラント(カップ)を挿入します(補強のためにネジで固定します)。
大腿骨側の傷んだ骨(軟骨)を大腿骨頭部ごと切除し、大腿骨の中にインプラント(ステム)を挿入します。

人工股関節置換術の手術前レントゲン写真
手術前レントゲン写真
人工股関節置換術の手術後レントゲン写真
手術後レントゲン写真
人工股関節インプラントの構造
インプラントの構造

さらにカップに超高分子ポリエチレンで加工されたライナー、ステムに骨頭ボールを装着し、合体(整復)させます。
ライナーと骨頭ボールの間には可動性があり、股関節の可動性も得ることができます。

痛みの原因となっている部分を切除するためほぼ確実に除痛効果があり、整形外科の手術の中でも非常に満足度が高い手術です

どんな症状だと手術した方がよいですか?

レントゲンなどの画像所見も重要ですが、基本的には患者さん本人の症状が一番重要です。日常生活レベルで痛みを感じたり、跛行(歩くときに足を引きずること)がある場合は手術をおすすめしています。

痛みがあまりなくても、股関節の可動域制限(股関節が固く、曲げたり開いたりできない状態)や脚長差による跛行がある場合も手術をおすすめする場合があります。詳しくは受診した際に医師とご相談ください。

手術の前にどんな準備をしますか?

画像検査としてレントゲンとCT検査が必須です。状態によってMRIなど検査を追加する場合もあります。
手術に際して、全身検索のため、血液検査、胸部レントゲン、心電図の治療は手術をされる患者さん全員に行っております。また必要に応じて心臓超音波検査、下肢静脈超音波検査を行ったり内科医師の診察が必要になる場合があります。

手術まで時間がある場合は術前に自己血貯血を行うことができます。

入院から退院までどのくらいの期間がかかりますか?

通常、手術後2〜3週間程度を予定しています。ほとんどの患者さんが手術後2週間程度で安定した歩行ができるようになり、退院可能となります。
患者さんによっては短期での退院や長期入院による治療も可能ですので、希望があればご相談ください。 

入院~退院までの流れの詳細はこちらを御参照ください。

退院後通院は必要ですか?

退院後も定期診察は必要です。
退院直後は2〜4週間後に受診していただくことが多く、その後は徐々に受診間隔が空いていきます。基本的には年1回程度の通院はずっと続けていただきます。

リハビリは入院中に日常生活を送れるレベルまで歩行できていることが多く、退院後はほとんど必要ない場合もありますが、必要があれば週1~2回程度の通院リハビリを行うことが可能です。

手術費用について

どれくらい費用がかかりますか?

基本的に人工股関節置換術を行う場合は高額療養費制度の対象になります。
年収によって自己負担額の上限が異なりますので、下記の表を参照ください。

70歳以上の方の上限額 ​ ​ ​ ​ ​ ​ ​ ​ ​
適用区分 外来(個人ごと) ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み 年収 約1160万円〜 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収 約770万円〜1160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収 約370万円〜770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
一般年収 約156万円〜約370万円18,000円
(年144,000円)
57,600円
住民税
非課税等
Ⅱ 住民税非課税世帯8,000円24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,600円

横にスクロールしてください。

69歳以下の方の上限額
適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収 約1160万円〜 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収 約770万円〜1160万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収 約370万円〜770万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
年収 〜370万円 57,600円
住民税非課税者 35,400円

横にスクロールしてください。

個室などを利用した際の差額ベッド代、入院中の食事代、入院中の日用品は別になります。

入院〜退院の流れについて

入院当日の流れ

  • 人工股関節手術の場合、入院は基本的に手術前日です(月曜日の場合は金曜日)。午前中(10時ころ)に病院に来院していただき入院手続きを行います。
  • 入院当日は麻酔科医師の説明、リハビリの理学療法士からの説明などがあります。主治医からの最終的な手術説明がある場合もあります(外来で同意書に沿った形の説明が済んでいる場合はありません)。
  • 基本的には入院前に検査は済んでますが、状況によっては入院後に追加で検査を行う場合もあります。 

手術当日の流れ

  • 手術室入室の時間になったら、歩ける方は歩いて手術室まで向かいます。
    ご家族がいれば、一緒に手術室の前まで行くことが可能です。
  • 手術室に入ったら本人確認や手術部位の確認を行った後に麻酔開始となります。
  • 麻酔は全身麻酔をかけて眠った後に伝達麻酔(手術後の疼痛緩和のための神経ブロック注射)を行います。その後手術を行いますので、次に目が覚めたときには手術は終わっています。
  • 麻酔から醒めていることが確認できたら、病棟の自室に戻ります。手術当日は基本的にベッドの上で安静となります。

手術翌日~退院までの流れ

  • 手術翌日からリハビリが開始されます。まずは車椅子に乗ることが第一段階ですが、順調な方は補助具(平行棒、歩行器)を用いて歩行練習を行います。
  • リハビリの進み具合には個人差があります。早い方は数日で杖を使用した歩行が可能になりますが、そうでない方もいます。リハビリが遅れても焦る必要はありません。
  • 手術後2週間程度経過すればほぼ全員が杖を使用して歩行できるまで回復します。仮にリハビリに時間がかかり、安定した歩行能力が得られていない場合は入院を延長することも検討します。
  • 基本的に手術後翌日・1週間後・2週間後に血液検査、1週間後・2週間後にレントゲン撮影を行いますが、経過によってはさらに検査が追加される場合もあります。

人工股関節置換術
よくあるご質問

手術後運動制限はありますか?

日常生活レベルでは基本的に運動制限はありません。脱臼肢位については入院中に行われる指導に従ってください。

スポーツに関しては退院直後に行うのは難しいかもしれませんが、最終的にはウォーキングや軽いジョギング、水泳、ゴルフ、社交ダンスなどは特に制限なく行ってもらって構いません。
その他の負荷が強いスポーツや、他人との接触があるスポーツについてはお勧めできないことが多いため、主治医とご相談ください。

脱臼すると聞きましたが大丈夫ですか?

人工股関節のライナーと骨頭ボールの間は可動性があり、骨頭ボールはライナーのくぼみにはまっているだけなのでで、無理な体勢を取ると脱臼してしまう恐れがあります。 深くしゃがみこんだり、股関節を内側にいれて捻る動作(屈曲、内転、内旋)などが脱臼肢位といわれており、リハビリで指導を行います。

とはいえ、私たちの手術方法は股関節の前方から侵入する方法で、できる限り筋肉や靭帯などを切らないで手術を行うようにしております。よって脱臼することはほとんどなく、過度に心配する必要はありません(過去3年間の脱臼率は0.5%未満です)。

高齢でも手術できますか?

重い持病がなく、ある程度元気であった患者さんであれば年齢による制限はありません。90歳以上でも手術する場合もあります。持病がある場合は手術前に内科受診してもらったり、追加検査が必要になる場合があります。
当院は内科医師も多数おり、持病がある方への対応や、合併症が起きた場合のバックアップ体制もできております。

人工関節には耐用年数があると聞きましたが、若年でも手術できますか?

結論から申し上げると手術は可能です。患者さんの年齢は重要ですが、症状、日常の活動性、持病の有無などを考慮して手術を行うかどうかを決めます。

以前はインプラントの質が現在より悪く、15年~20年程度で再置換手術が必要になる例が多く、65歳以下は手術を行わない方針の病院もたくさんありました。しかし、インプラントの進化により、長期の耐用年数が望めるようになったため、比較的若年であっても痛みの症状や歩行障害が強い場合は手術を行うことがあります。

もちろん若年であれば長期的に再置換手術が必要になるリスクはありますが、症状が強い場合は、その状態で10年、20年も我慢する方が患者さんの負担になると判断すれば手術を行った方が良いと考えております。

手術後どのくらいで歩けるようになりますか?

人工股関節置換術の手術翌日からリハビリが開始され、患者さんによっては、翌日から補助具(平行棒や歩行器)を用いて歩行練習が可能になります。個人差がありますが、順調であれば、手術後1週間程度で杖歩行が可能になる患者さんが多く、ほとんどの患者さんが手術後2週間程度経過すれば、杖を使って安定した自立歩行ができるようになり、退院可能となります。

一方で手術後、股関節の軽度の痛みや違和感は入院中に完全には取れないこともありますが、退院後数か月で徐々に取れていくことがほとんどです。

手術後は早く退院できますか?長く入院できますか?

通常は、人工股関節置換術の手術後2週間程度までしっかりリハビリし、また2週間後の採血やレントゲン、手術の傷が問題ないことを確認してから退院することを勧めています。
しかし一方で、前述のように、順調な患者さんは手術後1週間程度で杖を使用して安定した歩行が可能となります。お仕事の都合や家庭の事情で早期退院を希望される方はご相談いただければ病状にもよりますが、手術後1週間程度で退院可能なことも多いです。

逆に高齢であったり、痛みで動けない期間が長く、長期のリハビリが必要になる患者さんもいらっしゃいます。長期のリハビリ、入院が希望であったり、主治医が長期リハビリが必要と判断した場合はリハビリ専門の病院(回復期病院)への転院も可能です。
詳しくは受診した際に医師とご相談ください。

傷の大きさはどのくらい?抜糸はありますか?

当院では最小侵襲手術(MIS)を採用しており、通常7〜10cm程度の皮膚切開で手術を行っております。ただ、小さな傷にこだわっているわけではなく、重要なことはあくまで筋肉や靭帯の損傷を最小限にして、人工股関節が適切に設置することですので、変形の程度や手術所見によって傷が大きくなることがあります。

また、皮膚の中で吸収糸(いわゆる溶ける糸)を使って縫合していますので基本的に抜糸はありません。

両方の股関節が悪いですが同時に手術できますか?

可能です。ただし人工股関節の両側同時手術にはメリット・デメリットがあります。
メリットとしては一回の入院で済むことや片方ずつやることで起きる左右差(痛みの差や脚長差)が起こりにくいことです。一方でデメリットとしては体への負担が大きくなること(例えば出血量は単純に約2倍になります)、手術直後のリハビリがやや大変な点などがあります。貧血がある方や持病がある方は主治医の判断で両側同時手術ができない場合もあります。メリット、デメリットをご理解の上、主治医とご相談ください。

輸血は必要ですか?

人工股関節置換術の手術では300~500cc程度出血します。元々貧血が無い方であれば、輸血が必要になる可能性は低いですが、予想外の出血を起こすこともあるため、手術まで時間がある場合は自分の血液をあらかじめ保存しておく、自己血貯血を行うことができます。

貯血することにより他人の血液を輸血(同種血輸血)する可能性は極めて低くなります。手術まで時間がない場合や元々貧血があって貯血が難しい場合は同種血輸血を行う可能性があります。

青葉病院で手術するメリットは何ですか?

当院には人工関節学会認定医が3人(坂本、渡辺、輪湖医師)在籍しており、専門的な診療を行っています。

手術は最小侵襲手術(MIS)を採用しており、可能な限り筋肉や靭帯を温存して手術を行っており、手術後の回復も早く、満足して退院していく患者さんが多いです。また、手術中にレントゲン透視を用いてインプラントの設置いち前述の通り、通常2〜3週間程度の入院を予定していますが、回復が早いため1週間程度の早期退院も可能であり、また、地域の病院との連携もあるため、逆に長期のリハビリ入院希望にも対応可能です。

また、総合病院である当院には内科や救急科、他科の医師も多数在籍しています。高齢で持病が複数ある方もバックアップ体制があるため、比較的安心して手術を受けていただけると考えております。残念ながら合併症が起きてしまった場合も他科と連携して、速やかに対応可能です。