心房中隔欠損症(ASD:Atrial Septal Defect)
心房中隔欠損症は先天性心疾患の中で2番目に多い疾患です。
1000人の出生に対し5~6人に起こるといわれています。心房中隔欠損症(ASD)のうち80%は2次孔欠損型と呼ばれるもので卵円窩の場所に開いた孔です。
1次孔欠損型と呼ばれるタイプは、心房と心室の間にある「房室弁」に近い場所にあり、「不完全型房室中隔欠損」とも呼ばれ、房室弁に「クレフト」という切れ目がある場合があります。
血行動態
心房中隔欠損では、心房のレベルで左心房から右心房へ血液が流れます。その結果、右心房、右心室、肺動脈、肺静脈に流れる血流量が増加します。経過が長くなると右心房、右心室の拡大が起こります。
小児期に、聴診や心電図の異常を指摘され心エコーで心房中隔欠損と診断されます。
成人期に心房中隔欠損が見つかった場合は、拡大した心房の影響で「心房細動」という不整脈を伴う場合があります。
治療
心房中隔欠損の位置、大きさ、体格などの条件を満たす場合は、心臓カテーテル(細い管を血管に挿入して治療)の手技で、心房中隔欠損孔をデバイス(傘の形をした人工補填物)などで閉じる方法があります。
カテーテルでの閉鎖が困難な場合や、他の外科的手技(不整脈治療など)が必要な場合は、外科的に心房中隔欠損を閉じます。外科的に心房中隔欠損孔を閉じるには、人工心肺を使用して心停止下で行います。
欠損孔は多くの場合直接閉鎖できますが、欠損孔を自己心膜(心臓を包んでいる袋)パッチやゴアテックス®︎などの人工心膜パッチで閉鎖することもあります。
説明の中の図は「PICUハンドブック 小児集中治療の最前線 テコム」から許諾を得て掲載しています。
先天性心疾患の病態
- 心室中隔欠損症(VSD:Ventricular Septal Defect)
- 心房中隔欠損症(ASD:Atrial Septal Defect)
- 房室中隔欠損(AVSD:Atrio-Ventricular Septal Defect)
- 肺動脈絞扼術(PA banding術)
- ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot)
- 心室中隔欠損のない肺動脈閉鎖(PA / IVS:Pulmonary Atresia / Intact Ventricular Sep-tum)
- BCPS(Glenn(グレン))手術
- フォンタン(Fontan)手術
- 総肺静脈還流異常症(TAPVD:Total Anomalous Pulmonary Venous Drainage)
- 大血管転位症(TGA:Transposition of Great Arteries)
- 総動脈幹症(Truncus Arteriosus)
- 大動脈縮窄症(CoA:Coarctation of Aorta)
- 大動脈離断(IAA:Interrupted Aortic Arch)