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診療科のご案内

肺動脈絞扼術(PA banding術)

大きな心室中隔欠損がある場合など、肺動脈に血流が流れすぎてしまうことがあります。肺に流れた血液は肺静脈を介して左心房、左心室に還ってきます。よって肺に流れる血流が多いほど、左心室の容積が大きくなります(容量負荷)。左心室からは、圧の高い大動脈よりも、心室中隔欠損孔を通って血圧の低い肺動脈の方へより流れやすくなってしまいます。

また、肺に高い血圧の血液がたくさん流れる状態が続くと、「肺高血圧症」になり、枝分かれした先の細い肺動脈の血管壁が分厚く変性し始めます。肺動脈血管壁が分厚くなり器質的に変化してしまった状態を「アイゼンメンジャー化」と呼び、肺高血圧症が固定化してしまいます。よって、なるべく早い段階で肺に流れる血流量を制限する必要があります。

肺動脈絞扼術(PA banding術)は主肺動脈の周りにベルトのように軽く縛って狭く(バンディング)して、肺動脈に流れる血液の量を制限する手術です。バンディングにはゴアテックス®︎という人工素材を使用します。肺動脈絞扼術により、流れすぎていた肺への血流量が減ります。
また、大動脈への血液量も相対的に増加します。肺から左心室に還る血液の量も減り、左心室の容量負荷も軽減されます。心室が拡大することによって起こっていた房室弁逆流(心房と心室の間にある弁の逆流)も改善されます。

肺動脈絞扼術は段階的な治療のひとつとして行われます(姑息術とも呼ばれます)。しばらくして病態が落ち着いた段階で、心臓の解剖学的な特徴に合わせた最終的な治療が必要になります(根治術と呼ばれます)。

説明の中の図は「PICUハンドブック 小児集中治療の最前線 テコム」から許諾を得て掲載しています。

先天性心疾患の病態

心臓血管外科