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診療科のご案内

ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot)

ファロー四徴症は、出生1000人のうち0.3人ほどに見られる先天性心疾患です。先天性心疾患の小児の3~4%を占めます。解剖学的な特徴は1888年ファロー医師により記載されました。

その4つの特徴とは、心室中隔欠損(左右の心室の間の壁に孔がある)、右心室の肥大(心筋の壁が分厚くなっている)、大動脈騎乗(大動脈弁が心室中隔の真上に存在する)、右室流出路狭窄(右心室から肺動脈への出口が狭い)です。

ファロー四徴症の病態は、肺に流れる血液量が少ないことで表されます。右心室から肺動脈への出口が狭いこと、肺動脈自体が細いことが挙げられます。また、ファロー四徴症の75%で、肺動脈弁は2尖弁です。2尖弁の約半数で弁の低形成が見られます。以上から肺動脈に血液が流れにくい、という特徴があります。

また、右心室は大きな心室中隔欠損孔により、血圧の高い左心室と同じ位の高い血圧にさらされます。出生時は右心室の壁は厚く徐々に薄くなっていくのに対して、ファロー四徴症では右心室の心筋はさらに分厚くなっていって右心室肥大を起こします。右心室の出口の心筋が分厚くなるとさらに右心室から肺動脈に血液が流れにくくなります。

一方、大動脈は心室中隔欠損孔のすぐ上に存在し、心室中隔という左右の心室の間の壁の上に乗っているように見えます。これを「大動脈騎乗」と呼びます。この解剖学的な特徴により、大動脈へは酸素を多く含む左心室からの血液はもちろん、酸素が少ない静脈血を含む右心室からの血液も流れることになります。

よって、大動脈へは酸素濃度の少ない血液が流れ、このことを「チアノーゼ(還元型ヘモグロビンが多い)」と呼びます。ファロー四徴症では、唇や爪の色が 紫色になることがあります。これがチアノーゼの状態です。

治療

治療は解剖学的な特徴により、手術の時期、段階的手術を用いるか、内科的な治療を優先するかが決められます。

肺に流れる血流量が極度に少なく、生まれたばかりから肺への血流が動脈管に依存しているような循環では、動脈管を開いておく必要があります。プロスダグランジンという製剤を持続的に点滴で使って、動脈管を開く治療を行います。その後、状況が落ち着いた時期に、段階的手術を行うか一期的修復術を行うかを決定します。

また右心室の出口が心筋の肥大によって狭くなるのを防ぐために、βブロッカーと呼ばれる薬を内服することがあります。

段階的手術を選択した場合、まず不足した肺動脈への血流を確保するための手術が必要になります。大動脈の枝の血管から肺動脈の間にゴアテックス®︎という人工血管をつなぎます。

この人工血管によって血圧の高い大動脈から血圧の低い肺動脈に血液が流れます。肺動脈に流れる血流が増え、肺でたくさん酸素を含んだ血液が左心房に戻り、左心室、大動脈へと送られます。

これにより、全身の血液の酸素飽和度が上昇します。この手術を「BTシャント術」と呼びます。BTとはこの手術を開発した2人の医師の名前、Blalock(ブラロック)とTaussig(トウシグ)の名前に由来します。BTシャントにより肺動脈への血流は増加し、肺動脈の径の発達や肺動脈弁の発達も期待できると報告されています。

右心室の出口や肺動脈弁がある程度保たれていて、チアノーゼの程度が許容範囲である場合、段階的手術を行わずに一期的修復術(一度の手術で全ての病変を治すこと)を行います。手術は、人工心肺を使用して心停止下で行います。

手術では、ファロー四徴症の解剖学的特徴から、正常に近い解剖に修正することが目的です。

  • 右心室の出口の心筋の肥厚を切除し、狭くなった部分を広くします。
  • 心室中隔欠損孔をゴアテックス®︎という人工心膜パッチで閉鎖します。
  • ゴアテックス®︎または自己心膜(心臓を包んでいる袋)パッチで肺動脈の拡大を行います。

肺動脈弁はほとんどの場合2尖弁ですが、その形態により自己弁を残したり、ゴアテックス®︎で作られた人工的な弁で逆流を制御したりします。

自己の肺動脈弁の低形成の程度によっては、肺動脈弁逆流や弁狭窄をきたすことがあり、将来的にこの部分の再手術が必要になることがあります。

説明の中の図は「PICUハンドブック 小児集中治療の最前線 テコム」から許諾を得て掲載しています。

先天性心疾患の病態

心臓血管外科