総動脈幹症(Truncus Arteriosus)
総動脈幹症は先天性心疾患全体の0.4%を占めます。一本の大きな総動脈幹が、心室から出ています。総動脈幹は心室中隔(左右の心室の間の壁)に騎乗しています。心室中隔欠損により総動脈幹へは左右の心室から血液が流れます。
大動脈へは酸素濃度の高い血液(動脈血)と酸素濃度の低い血液(静脈血)が混合した血液が流れるため全身にチアノーゼが起こります。総動脈幹には肺動脈がつながるため、総動脈幹からは、大動脈・肺動脈・冠動脈に血液が流れます。
総動脈幹の弁には形態異常がみられます。弁尖が4つある4尖弁が約27%、弁尖が2つある2尖弁を8%の割合で認めます。弁形態異常に伴い、弁逆流が起こることがあります。弁逆流があると、左心室がさらに拡大し心不全になったり、冠動脈への血流がさらに低下したりすることがあります。
生後しばらくすると肺動脈の抵抗が低下するため、肺動脈にたくさんの血液が流れるようになります。肺動脈に流れるたくさんの血液は左心房、左心室に還ってくるため、左心室の拡大、心不全、肺うっ血が起こります。
また肺動脈への血液の流れが多いと、冠動脈への血液の流れが減少することがあります。また腸管などへの血流が低下することもあります。
治療
生後早期に手術を行います。手術は人工心肺を使用し、心停止下に行います。
1)心室中隔欠損をゴアテックス®︎などの人工心膜パッチで閉鎖、2)総動脈幹から肺動脈の分離、3)右心室から肺動脈へゴアテックス®︎などの人工血管を使って接続します。
説明の中の図は「PICUハンドブック 小児集中治療の最前線 テコム」から許諾を得て掲載しています。
先天性心疾患の病態
- 心室中隔欠損症(VSD:Ventricular Septal Defect)
- 心房中隔欠損症(ASD:Atrial Septal Defect)
- 房室中隔欠損(AVSD:Atrio-Ventricular Septal Defect)
- 肺動脈絞扼術(PA banding術)
- ファロー四徴症(Tetralogy of Fallot)
- 心室中隔欠損のない肺動脈閉鎖(PA / IVS:Pulmonary Atresia / Intact Ventricular Sep-tum)
- BCPS(Glenn(グレン))手術
- フォンタン(Fontan)手術
- 総肺静脈還流異常症(TAPVD:Total Anomalous Pulmonary Venous Drainage)
- 大血管転位症(TGA:Transposition of Great Arteries)
- 総動脈幹症(Truncus Arteriosus)
- 大動脈縮窄症(CoA:Coarctation of Aorta)
- 大動脈離断(IAA:Interrupted Aortic Arch)