HoLEP(ホルニウムレーザー前立腺核出術)
HoLEP(ホーレップ)
(ホルニウムレーザー前立腺核出術)とは
「HoLEP(ホーレップ)」の正式名称は「経尿道的ホルミニウムレーザー前立腺核出術」と言います。
前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)による排尿障害で悩む人に対し行われる手術療法の一つで、内視鏡の先についたレーザーメスで肥大した患部を切除する治療法です。HoLEPのメリットとして、従来の手術法と比べ低侵襲で出血や痛みが少なく、患者さんに負担の少ない手術が可能になりました。
このページでは「HoLEP(ホーレップ)」についてできる限り簡単に、わかりやすく説明します。
HoLEPはどんな人に対して行う手術ですか?
前立腺肥大に伴う排尿障害のある患者さんに対して手術します。
前立腺肥大とは
中年以降の男性では前立腺の内腺が大きくなることにより、尿道を圧迫し尿の出が悪くなる(排尿障害)ことがあります。
排尿障害とは
前立腺肥大による排尿障害では以下のような症状を来します。
- 排尿の勢いがなくなる
- 尿をしたあともすっきりせず、残尿感がある
- 尿が近い
- 夜何度もトイレに起きる
- 尿がしたいとおもうと我慢できない、漏れてしまう
どのような患者にHoLEPを勧めますか?
下記に該当する患者さんに手術をおすすめしています。
- 内服治療の効果が不十分な方
- 症状が中等度~重度の方
- 尿閉・尿路感染症・血尿・膀胱結石などの合併症がある(または危惧される)方
HoLEPとはどんな手術ですか?
手術の目的は前立腺の閉塞を解除し、上記症状を改善することです。
前立腺をミカンに例えると、皮(前立腺の外腺)だけを残して、ミカンの実(腫大した前立腺の内腺)をくりぬいてくるイメージです。
手術は全身麻酔で行います。尿道から内視鏡を挿入して手術しますので、お腹を切ることはありません。
ミカンの実と皮の間をはがすようにレーザーをあてて剥離していき、数個にわけてくりぬいていきます(①)。
くりぬいた内腺はそのままでは大きくて内視鏡の中を通らないため膀胱の中に移動させ(②)、モーセレーターという機械で細かく砕いて内視鏡で吸引して回収します(③)。
止血をして特殊な膀胱カテーテルを挿入し手術終了です。
HoLEPの手術時間はどれくらいですか?
HoLEPの手術時間は麻酔も併せて3~4時間前後です(肥大の程度によります)。従来、前立腺肥大症の手術は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が主流でした。
TUR-Pは電気メスを使用して腺腫(内腺)を少しずつ削っていく手術のため、出血が多くなってしまったり、前立腺肥大が高度の場合は手術が難しいという問題がありました。
それに対しHoLEPはレーザーで腺腫を丸ごとくりぬく術式のため、出血や痛みが少なく、大きな前立腺でも手術可能であるという利点があります。また、手術後の再発が少ないという特徴もあります。
HoLEP手術前の準備について
HoLEPの術前準備として、下記のようなことを行います。
- 排尿症状の評価のために、アンケートや排尿の勢いや残尿量の検査を行います。必要に応じ画像検査(超音波検査、MRI検査、内視鏡検査)を行います
- 手術に際して、全身検索のため、血液検査、胸部レントゲン、心電図の治療は手術をされる患者さん全員に行っております
- 必要に応じて内科医師の診察が必要になる場合があります
HoLEP手術 入院~退院後の流れ
入院当日の流れ
入院は基本的に手術の前日です。午前中(10時ころ)に病院に来院していただき、入院手続きを行います。
入院当日は麻酔科医師の説明があります。主治医からの最終的な手術説明がある場合もあります(外来で同意書に沿った形の説明が済んでいる場合はありません)。
HoLEP手術当日の流れ
手術室入室の時間になったら、歩ける方は歩いて手術室まで向かいます。手術室に入ったら本人確認や手術部位の確認を行った後に麻酔開始となります。
麻酔は全身麻酔です。その後手術を行いますので、次に目が覚めたときには手術は終わっています。
手術後は太めの尿道カテーテル(尿をだすためのやわらかい管)を留置します。違和感や痛みが強ければ痛み止めを処方いたします。手術当日はベッド上で安静に過ごしていただきます。
HoLEP手術翌日~退院までの流れ
手術翌日から食事開始です。尿道カテーテルは入っていますが、歩いていただくことも可能です。
経過が順調であれば手術後3~5日程度尿道カテーテルを抜きます。ご自身で排尿していただき、排尿の状態を確認致します。数日経過を観察し退院となります。入院から退院までおよそ1週間です。
退院後
HoLEP手術直後から、尿が勢いよくでるようになったと自覚していただける方がほとんどです。術後に一時的な尿漏れを認める場合がありますが、パットなどで対応できる軽微なことが多く、99%の方が、数か月以内にほとんどもれなくなります。
外来に定期的に通院していただき、自覚症状のアンケートや排尿の勢いや残尿の検査などから、排尿状態の経過観察をいたします。
HoLEP手術についてよくあるご質問
HoLEPは高齢でも手術できますか?
重い持病がなくある程度元気な患者さんで、数時間の全身麻酔が可能な全身状態であれば年齢による制限はありません。90歳以上でも手術する場合もあります。
持病がある場合は手術前に内科受診してもらったり、追加検査が必要になる場合があります。当院は内科医師も多数おり、持病がある方への対応や、合併症が起きた場合のバックアップ体制もできております。
HoLEP手術時に痛みはありますか?
HoLEPは尿道からの手術であり、お腹を切ることはありません。そのため、手術による痛みは軽微なことがほとんどです。手術後の傷跡も残りません。
HoLEPの入院期間はどのくらいですか?
入院から退院まで約1週間です。
HoLEP手術後の生活は? 職場復帰はいつから可能ですか?
基本的には退院後はいままでとお変わりなく過ごしていただけます。
デスクワークなどの軽作業は退院直後より可能ですが、手術直後は血尿や尿道の刺激症状が残存する場合もあるので、重いものを持ち上げたり、長時間の運転やサイクリングなど、会陰(陰嚢と肛門の間)に負荷がかかるようなことは避けていただきます。
退院後2週間~1か月を目安に一度外来で手術後の経過を診察いたします。
退院後の通院は必要ですか?
退院後も定期的に通院いただき、尿の勢いの検査、検尿などで排尿の状態について診察いたします。
術後半年~1年の通院をされる方がほとんどです。定期通院終了後も、排尿障害が再発した場合には再診いただけますので、ご相談ください。
入院~退院後までの流れの詳細はこちらをご参照ください。
HoLEP手術はどれくらい費用がかかりますか?
保険料が1割負担の方で約5万円、3割負担の方で約14万円です。
個室などを利用した際の差額ベッド代、入院中の食事代、入院中の日用品は別になります。
3割負担の場合には限度額認定証を提出いただくと負担金が軽減される場合があります。 詳しい説明は入院説明の際にさせていただいております。
青葉病院でHoLEPを受けるメリットは何ですか?
千葉県屈指の症例数
当院ではHoLEPを2007年に導入致しました。県内でもHoLEP導入施設は増えていますが、年間20-50件程度の症例数が多い中、当院では年間100件以上の症例数をこなしています。
導入以来現在まで1000件以上のHoLEP症例を経験しており、これは千葉県でも屈指の症例数です。
充実の治療機器
当院では2018年2月より従来の80Wレーザーに加え、最新の120Wレーザーを導入しました。この120Wレーザーはレーザーパルス幅を変更できる可変式であることが特徴です。パルス幅を変更できる事により止血に適したロングパルス、剥離に適したパルスを使い分ける事により、より出血が少なく侵襲の少ないHoLEPが可能となりました。
当院では120Wレーザーと80Wレーザー、2台の体制を備えております。
充実したレーザー設備を生かし、手術予定の患者さんに速やかに治療をご提供することが可能です。前立腺肥大だけでなく尿管結石に対する内視鏡的結石砕石術も広くおこなっており、レーザーを用いた治療は当科の柱の1つになっています。
総合病院ならではの安心感
当院は総合病院であり、内科や救急科、他科の医師も多数在籍しています。高齢で持病が複数ある方もバックアップ体制があるため、比較的安心して手術を受けていただけると考えております。
また、残念ながら合併症が起きてしまった場合も他科と連携して速やかに対応可能です。
HoLEPについてのドクターインタビューを掲載しております。ぜひご覧ください。